2021年3月に開催された第126回日本解剖学会総会?全国学術集会(生理学会との合同大会)において、本学医学科第4学年の岡崎倫和さんによる「Gross anatomical study on the route of arteries within the transverse mesocolon(横行結腸間膜内における血管走行経路に関する肉眼解剖学的研究)」の研究が、令和2年度肉眼解剖学トラベルアワード(献体協会賞)を受賞しました。
この賞は37歳以下の優れた若手解剖学者に与えられるもので、献体を独自の視点で注意深く観察し、そこから新たな解剖学的?発生学的概念の構築をした、あるいは臨床解剖学的に新たな貢献があると認められた研究に対して授与されるものです。
本学医学科では、入学時に研究室の紹介がなされ、希望する学生は研究室にて指導教員のもとで研究することができます。また、カリキュラムとしても、基礎医学の講義?実習と臨床医学が修了した第4学年で、「グループ別自主研究」のコースで、希望する研究テーマを選び、約3週間基礎医学の研究室に所属し、研究者の考え方や方法論などを体験し、研究マインドを育んでいます。今回、受賞した岡崎さんは、第2学年から人体構造学分野の研究室に自ら飛び込み、指導教員のもと取り組んできた研究が評価されました。
■【教室主任】人体構造学分野 伊藤正裕 主任教授のコメント
横行結腸間膜内を走行する動脈に関する従来の研究は、血管の分枝パターンの解析がほとんどです。岡崎さんは、横行結腸間膜内の動脈と結腸との位置関係に着目し、間膜内における動脈走行位置の左右差を解析しました。その結果、間膜左半分において動脈の走行しない広大な空間の存在を明らかにし、その空間を横切るいくつかのバリエーションの存在を初めて同定しました。
本年は多くの公募の中から全国で5名の研究者が受賞者として選ばれましたが、学生の受賞は大変珍しく、東京医大生のポテンシャルの高さを改めて認識させられた総会となりました。
■医学科第4学年 岡崎倫和さんの受賞コメント
この度の『肉眼解剖学トラベルアワード』の受賞を大変光栄に思っております。第2学年の解剖学履修後、学び足りなさを感じ今現在に至るまで解剖学教室(人体構造学分野)で研究をしてまいりました。第3学年での臨床科目の講義では、解剖学の知識が大変役に立ち、解剖学なくしては医学が成り立たないということを実感いたしました。
今回受賞した『横行結腸間膜内における血管走行経路』の研究は、消化器の講義を聞いた時にふと思い浮かんだ内容です。ご遺体を用いる解剖学ならではの視点で研究を行えたことが、私にとって大変貴重な体験となりました。
人体構造学の先生方のご協力もあり、素晴らしい賞を頂けたことに感謝するとともに、これからも医学の基礎は解剖学にあると言うことをモットーに、更なる高みを望んで勉学に励む所存です。