2023/04/10
研究活動 プレスリリース

【プレスリリース】がんにおける新たな血管新生機構を発見 ? 肉腫の融合遺伝子とその標的分子の機能を明らかにする ?

【概要】
 188bet体育_188bet亚洲体育-在线*投注(学長:林 由起子/東京都新宿区)医学総合研究所未来医療研究センター実験病理学部門の中村卓郎特任教授らが、公益財団法人がん研究会がん研究所がんエピゲノムプロジェクト 田中美和主任研究員、丸山玲緒プロジェクトリーダー、がん研有明病院整形外科 阿江啓介部長、松本誠一サルコーマセンター長、京都大学大学院工学研究科マイクロエンジニアリング専攻 横川隆司教授らとの共同研究で、胞巣状軟部肉腫(alveolar soft part sarcoma, ASPS)の原因融合遺伝子ASPSCR1::TFE3(AT3)の機能とその標的遺伝子を明らかにし、ASPSの血管形成を誘導する仕組みを解明しました。

 ASPSは希少がんである軟部肉腫の一つで、AYA世代(思春期?若年成人)に好発します。腫瘍の増殖は緩やかですが、血管形成が盛んなことから全身に転移する傾向が強く、予後不良な疾患です。ASPSの原因融合遺伝子AT3が血管形成をはじめとする腫瘍の形質をコントロールしていることが示唆されていました。本研究グループは2017年にASPSのマウスモデルを確立して研究を進めていましたが、今回AT3蛋白質が血管形成を促進する遺伝子のスーパーエンハンサーに結合することを発見し、エピゲノム編集技術を用いて標的遺伝子を同定しました。標的遺伝子には血管形成因子自体と、それらを運ぶ細胞内輸送促進因子が含まれ、ASPSにおける独特な血管構造の原因となっていることがわかりました。今後、輸送促進因子機能を抑える全く新しい治療方法の開発にもつながる成果と期待されます。

 この研究成果は、2023年4月7日(米国時間)のNature Communications誌(オンライン版)に掲載されました。

【本研究のポイント】

  • ASPSモデルマウスから樹立した腫瘍細胞株を継代培養すると、融合遺伝子AT3の発現がしばしば消失し、培養条件下では融合遺伝子は不要であることが示唆された。。
  • AT3を失った細胞をマウスに移植すると、血管形成が消失し腫瘍増殖が著しく抑制された。
  • AT3はスーパーエンハンサーを含むアクティブエンハンサーに結合する。
  • AT3の発現が消失した腫瘍細胞では血管形成に関連した遺伝子のエンハンサー機能が低下し、遺伝子発現も抑制された。
  • エピゲノム編集技術を用いてASPSの血管形成に関わるエンハンサーと標的遺伝子Rab27a, Sytl2, Pdgfb, Vwfを同定した。
  • Rab27aとSytl2は細胞内小胞輸送に関わり、血管形成因子の輸送を促進することがマイクロ流体デバイスを用いた解析から証明された。

 

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